筑紫書体についてまとめてみた/ゴシック体・丸ゴシック体編
フォントワークスの書体デザイナー・藤田重信さんがデザインした筑紫書体。
デザインおよびフォントについて勉強中の私が、「筑紫書体についてもっと知りたい!」という熱い思いから、数十種類にのぼる全ラインナップの特徴をまとめてみた記事の第二弾です。
令和2年12月現在の、筑紫書体の一覧は以下のとおりです。
今回は、このうち、ゴシック体・丸ゴシック体についてご紹介していきます。
★前回の記事、明朝体編はこちら
→筑紫書体についてまとめてみた/明朝体編 | What one likes
なお、以下の筑紫書体見本について、ウェイトが複数ある書体は、Rを使用して組んでいます。
目次
筑紫ゴシック
筑紫ゴシックは、筑紫明朝のデザインを意識して作られた書体。
全8ウェイトあり、本文、キャプション、小見出しから大見出しまで幅広く使えます。
オーソドックスながらも、わずかに筆圧の変化のある伸びやかな線に、手書きのあたたかみを感じられます。
字面が小さめでゆったりとした字間。漢字に比べて仮名がやや小ぶりになっており、読んでいて飽きのこない心地よいリズムが生みだされていますね。
優しく上品な雰囲気の読み物に仕上がりそう。
ちなみに、このブログの本文にも、筑紫ゴシックのWebフォントを使用しています。Webフォント・サービスFONTPLUS(フォントプラス)の契約が切れてしまったので、現在は使用していません。
使用しているのは、Monotype社の欧文「Between™ 2」を組み合わせた「筑紫ゴシック Pr5 R+Between™ Pro 2 Light」という混植フォント。
実は、Webの混植フォントは、2020年10月15日より提供が始まったばかりで、フォントワークスさんが国内初なんです。スクリーン上でも、美しい和欧の文字組みが可能に。激アツ。
★混植フォントについて、詳しくは公式HPをご覧ください。
→国内初、和欧混植をWebフォントとして利用できる「混植フォント」サービスを開始 | Webフォント・サービス FONTPLUS
→〈混植フォント第2弾〉フォントワークス社とMonotype社のWebフォント、11ファミリー13書体を追加リリース | Webフォント・サービス FONTPLUS
筑紫オールドゴシック
筑紫オールドゴシックは、筑紫ゴシックよりも狭いフトコロに、じんわりと抑揚が効いた線が特徴的です。
金属活字のインクのにじみや、写植のボケを再現したようなやわらかでレトロな風合いがありつつも、同時にモダンさも感じられる書体です。
文字自体が、雄弁に語り出しそうな、温度や湿度を感じさせる書体だと思います。
熟成感のある、少しほろ苦い大人のゴシック体、という印象を抱きました。
筑紫アンティークLゴシック/筑紫アンティークSゴシック
筑紫アンティークゴシックは、美しいプロポーションが印象的な書体。
キュッと絞った狭いフトコロと、伸びやかなハライに生き生きとした表情を感じます。
筑紫オールドゴシックと同様に、金属活字や写植文字のような風合いがあり、素敵ですね。
そして特徴的なのが、流麗な仮名。
このような筆脈が見て取れるデザインは、これまでのゴシック体にはなかったように思います。
「普通のゴシック体じゃ物足りない…もっとエモい表現がしたい!」というときに使いたくなりますね。
筑紫アンティークゴシックは、古風な印象のゆったりとした文字間で組める「S」スモールと、現代的な文字間で組める「L」ラージの2種類があります。
筑紫A丸ゴシック
筑紫丸ゴシックは、標準的な丸ゴシック体とは一味違う、情趣あふれる書体です。
比較のため、標準的な丸ゴシック体のひとつである「スーラ」という書体を見てみましょう。
↑スーラは、フトコロが広く、漢字と仮名の字面がともに大きく、視覚的なばらつきの少ない書体。
現代的でスタイリッシュなデザインで、街のサインや家電製品の表示など、はっきりと読ませる必要のある場面によく使われています。
一方、筑紫丸ゴシックは、先の書体見本のとおり、フトコロが狭くレトロな風合いがあり、角の丸みも強めで、あたたかい雰囲気をまとっています。
小ぶりな仮名も相まって、読んでいて心地よいリズムを感じます。
上品で柔らかく、穏やかな印象を与えたいときに使うとよさそう。文章を組むのにもおすすめ。
筑紫丸ゴシックは、仮名がそれぞれ異なるA、Bの2種類あります。
筑紫A丸ゴシックの仮名は、ニュートラルなデザインです。
筑紫B丸ゴシック
筑紫B丸ゴシックの仮名は、オールドスタイルを意識してデザインしたものです。
英数字は、エジプシャン(Egyptian)系のデザインを採用しています。
エジプシャンとは、厚みのあるセリフを持つ、西部劇にもよく登場する書体です。ヴィンテージな印象が増しますね。
筑紫ANA丸ゴL/筑紫ANA丸ゴS
筑紫AN丸ゴの「AN」は「アンティーク」の略。
この書体は、他に類を見ない、大きくまあるいラウンドが特徴的。
ころんとした丸っこい形が可愛らしい。けれども締まったフトコロのためか、幼すぎない。
これが「オトナ可愛い」ということなのか…そんなことを考えさせられる、絶妙なバランスの書体です。
個人的に、気になる造形を発見。
上の漢字に共通する部分…そうです、「又」の造形が、くるんと輪っかのようにデフォルメされています。このまま何かのロゴになりそうな、斬新で面白いデザイン。
筑紫AN丸ゴは、仮名が異なるA、B、Cの3種類あります。
筑紫ANA丸ゴの仮名は、標準タイプです。
「S」スモールと「L」ラージの2種類があります。
筑紫ANB丸ゴL/筑紫ANB丸ゴS
筑紫ANB丸ゴの仮名は、手書きタイプです。
「S」スモールと「L」ラージの2種類があります。
文字をなぞる視線を優しく誘っていくような、流れる筆致が心地よいですね。
筑紫ANC丸ゴL/筑紫ANC丸ゴS
筑紫ANC丸ゴの仮名は、毛筆タイプです。
「S」スモールと「L」ラージの2種類があります。
くにゃりとした、粘りのある独特のデザインが目を引きます。
さいごに
今回は、筑紫書体のゴシック体・丸ゴシック体についてまとめてみました。
筑紫書体シリーズは、フォントワークスの年間定額制フォントサービスLETSですべての書体を使うことができます。mojimoでも一部を使用可能です。
来年には、Futuraに合う新書体「筑紫AM(アンティークモダン)ゴシック」が登場予定だそうです。楽しみですね!
ちなみに、書体デザイナー・藤田重信さんのTwitterで、書体制作の過程等を垣間見ることができます。
さて、表情豊かな筑紫書体のエッセンスを、少しでもお伝えできたのならば幸いです。
私もデザインの技術を磨いて、筑紫書体を素敵に使いこなせるようになりたいなぁ。