筑紫書体についてまとめてみた/明朝体編
![筑紫書体の特徴まとめ 明朝体編](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/5d7ae791623657754f17cb9fbb09e94f-1.png)
フォントの勉強を始めて、私が最初に心惹かれたのが、フォントワークスの書体デザイナー・藤田重信さんがデザインした筑紫書体でした。
インク溜まりのようなエッジの丸み、伸びやかなハライ…柔らかな中にもどこか緊張感を感じさせる書体たちに、ドキッとさせられたのを覚えています。
「筑紫書体についてもっと知りたい!」と思い、数十種類にのぼる全ラインナップそれぞれの特徴を、自分なりにまとめてみました。
令和2年12月現在の、筑紫書体の一覧は以下のとおり。
![フォントワークス筑紫書体一覧表](https://onelikes.net/wp-content/uploads/2020/12/e7ccf91f13139843b0d5f13f9d98f520-2.jpg)
今回は、このうち、明朝体についてご紹介していきます。
★第二弾の記事、ゴシック体・丸ゴシック体編はこちら
→筑紫書体についてまとめてみた/ゴシック体・丸ゴシック体編 | What one likes
なお、以下の書体見本について、ウェイトが複数ある書体は、Rを使用して組んでいます。
目次
筑紫明朝
![筑紫明朝書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/3e19f8a17fe2aa78e759232ea4b793d1-5.jpg)
筑紫明朝は、一般的な明朝体と比べると、フトコロ(文字の中の空間)が狭く、レトロな趣があります。
比較的クセの少ない字形ながらも、活字のインクの溜まりが見えてくるような味わい深い雰囲気をもっています。
誰にでも読みやすく、上品かつ親しみを感じる明朝体。ポスターなどにもよく使われていますね。
筑紫Aオールド明朝
![筑紫Aオールド明朝書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/f58038b7a7ca43d96203cbbe74d068cf-1.jpg)
美しい打ち込みや、伸びやかなハネ、ハライが特徴的な、筑紫Aオールド明朝。
フトコロが、筑紫明朝よりもさらにひと回り狭くなっており、より古風なニュアンスがあります。
筑紫オールド明朝に特徴的なのが、ガラモン(Garamond)系の英数字を採用している点です。
ガラモンとは、16世紀のフランスの活字製造業者のクロード・ガラモンによってつくられた書体。
平筆で書いた名残のあるオールドスタイルローマン体の代表格です。
ガラモン系の英数字が、漢字・仮名と相まって、古典的ながらも優美で洗練された雰囲気を醸し出していて素敵ですね。
筑紫Bオールド明朝
![筑紫Bオールド明朝書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/7c13d2fea2d9a7c2392d7edbdbe97309.jpg)
筑紫Bオールド明朝は、筑紫Aオールド明朝の漢字に、古風で新しいスタイルの仮名を組み合わせた書体です。
この書体はとにかく仮名が印象的です。
金属活字初期の仮名のニュアンスを感じつつも、どこか前衛的で新鮮に映ります。
個人的には、「あ」「お」「ぬ」「ん」の造形が特に気になりました。
![筑紫Bオールド明朝ひらがな あ お ぬ ん](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/202ea6f09b3baff76aa8abeb976a54f6.jpg)
↑打ち出してみました。笑 なんとユニークな形!
特別な場面で使うと、かなりインパクトを残せそうな書体だと思います。
筑紫Cオールド明朝
![筑紫Cオールド明朝書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/b4b02a89d66450d7705d064b096a047d.jpg)
筑紫Cオールド明朝は、筑紫Aオールド明朝の漢字に、クラシカルで斬新な運筆の仮名を組み合わせた書体です。
丸みのある、たっぷりと空気を含んだような字形と、鋭いエレメント。
流麗で味わい深い雰囲気なので、歴史や物語を感じさせるテキストに合いそうだなーと感じます。
筑紫Aヴィンテージ明朝L/筑紫Aヴィンテージ明朝S
![筑紫Aヴィンテージ明朝L書体見本](https://onelikes.net/wp-content/uploads/2020/12/5ccb1ed88a803cb9497cd277ed46a27b-1.jpg)
![筑紫Aヴィンテージ明朝S書体見本](https://onelikes.net/wp-content/uploads/2020/12/4fa5024ba9eada5316d07ebf7808b47d-1.jpg)
筑紫Aヴィンテージ明朝は、筑紫Aオールド明朝が持つ「気品さ・高級感・繊細さ」等の表現力を最大限まで高めた書風。
筑紫オールド明朝よりもフトコロが狭く、また、真四角にデザインされた従来の明朝体とは異なり、日本語の文字固有の形が再現されています。
ふんわりと優しい印象を受ける書体です。
筑紫Aヴィンテージ明朝は、「S」スモールと「L」ラージがあります。
筑紫Bヴィンテージ明朝L/筑紫Bヴィンテージ明朝S
![筑紫Bヴィンテージ明朝L書体見本](https://onelikes.net/wp-content/uploads/2020/12/d3ecc5bab18587cf40ff9b444e5b8795.jpg)
![筑紫Bヴィンテージ明朝S書体見本](https://onelikes.net/wp-content/uploads/2020/12/0be488d3d96a587ca2d215242aad5620.jpg)
筑紫Bヴィンテージ明朝は、明治4年に発刊された、慶應義塾出版「手習の文」福澤諭吉編の「ふ」のデザインにインスピレーションを受けた書体。
ぐにゃりと躍動感のある独特なフォルムです。
文字の一カ所を凝縮させ、そこからぐわっと線が広がっていくような、なかなかクセのあるデザインが面白いです。
筑紫Bヴィンテージ明朝は、「S」スモールと「L」ラージがあります。
筑紫B明朝
![筑紫B明朝書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/faa345d305237fbd10c57bf21d2da75a.jpg)
筑紫B明朝は、可読性の高い筑紫明朝に、次に紹介する筑紫アンティーク明朝の仮名が組み合わされた書体です。
英数字や記号類は、筑紫明朝のデザインを採用しています。
筑紫明朝と仮名のデザインが違うだけで、ガラリと雰囲気が変わりますね。
小説などの長文本文用に最適だとか。
ぐいぐいと文章に惹き込まれていくような体験を提供できそう。
筑紫アンティークL明朝/筑紫アンティークS明朝
![筑紫アンティークL明朝書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/c92f8a368f14b97c95089dcbd20e34ee.jpg)
![筑紫アンティークS明朝書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/c57c3300f8fee4585301ee76b575d4c6.jpg)
筑紫アンティーク明朝は、個人的にいちばん好みの書体。紙に活字をぐいっと押し込んだような風情がたまらなく素敵!
じんわりと丸みのあるエッジと、伸びやかな線質にほんのりと色気を感じます。
筑紫オールド明朝よりも、さらにフトコロが狭い書体です(ヴィンテージ明朝と同じくらい)。
また、文字の平均文字面も小さく、ゆったりとした字間の文字組になります。
書籍のカバーなどにもよく使われていますね。
ちなみに、このブログの見出しにも筑紫アンティークL明朝のWebフォントを使用しています。
筑紫アンティーク明朝は、「S」スモールと「L」ラージがあります。
筑紫Q明朝L/筑紫Q明朝S
![筑紫Q明朝L書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/10ecdb530bbe536719b962b8e2dab33d.jpg)
![筑紫Q明朝S書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/7c355eb8655d1c96a69c579669a17a6c.jpg)
「筑紫Q明朝の、Qって何だろう?」と思ったのですが、「Question」の「Q」からきているそう。
「これが明朝体?もはや筆書体では?」という疑問を書体名に反映させたそうです。
筑紫アンティーク明朝よりさらにキュッと狭いフトコロに、ニュッと長く伸びたハライの対比が面白いですね。
手書き風の仮名とともに、これまでの明朝体のイメージを覆すような書体となっています。
思わずゴクリと息を飲んでしまうような臨場感のある表現ができそう。見出しやリード文におすすめ。
筑紫A見出ミン
![筑紫A見出ミン書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/382fa9a990428c83ee07b3fc08bfb898.jpg)
筑紫見出しミンは、仮名がそれぞれ異なるA、B、Cの3種類あります。
伝統や情緒を程良く感じさせ、活字的な味わいと現代的な新しさを融合させた見出し用明朝体です。
筑紫A見出ミンの仮名は、毛筆楷書風です。
活字っぽさもある、落ち着きを感じさせる書体。
筑紫B見出ミン
![筑紫B見出ミン書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/6d1f6fa67f582180b8d6f069e9427676.jpg)
筑紫B見出ミンの仮名は、草書・行書風です。
堂々とした流れるような運筆。説得力のある表現ができそう。
筑紫C見出ミン
![筑紫C見出ミン書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/be06a5a37e99de35ff78b8f2aadfaa77.jpg)
筑紫C見出ミンの仮名は、金属活字時代の筆運びを踏襲したもの。
A、Bよりも丸みのある字形ですが、線に太細の変化が効いているためか、全体にスマートな印象を受けます。
筑紫新聞明朝
![筑紫新聞明朝書体見本](http://xs812546.xsrv.jp/wp/wp-content/uploads/2020/12/da6183d5da8c3e00386cda6c8823b186.jpg)
筑紫新聞明朝は、シャープな中にも柔らかさを感じさせる新聞明朝体。
見本は85%の平体をかけて組んでみました。一気に新聞っぽさが出ましたね。
するすると読み進められる書体なので、新聞だけでなく、雑誌のような長文にもうってつけですね。
さいごに
今回は、筑紫書体の明朝体についてまとめてみました。
筑紫書体シリーズは、フォントワークスの年間定額制フォントサービスLETSですべての書体を使うことができます。mojimoでも一部を使用可能です。
次回は、ゴシック体と丸ゴシック体をご紹介したいと思います。